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アソビの倉庫

短編小説、演劇脚本、写真など、わたくし結希遊の作品を掲載しております

りゆう

放課後の教室

教師一人女子生徒一人

物理の補講

先生 滑らせた消しゴムがこうやって止まってしまうのはゴムと床の間に摩擦力が発生しているからという理由がある、もしこれがなかったら減速することなく消しゴムは滑り続ける。どんな現象にも理由がある

生徒 ねえ、先生

先生 おお、何。質問?

生徒 私死のうと思うんだけどさ

先生 なんでまた

生徒 生きてる理由がないし

先生 いや、理由なんていくらでもあるでしょ

生徒 例えば?

先生 えーと、美味しいご飯が食べたいとかさ

生徒 ご飯って所詮生きるためのエネルギー摂取すぎませんよ

先生 えーっとじゃあ、夕焼けが綺麗とかさ。ほら

生徒 曇ってますけど

先生 明日は雨らしいよ

生徒 やっぱり。生きる理由なんてないじゃん

先生 いや、ある。きっとある。親御さんを悲しませないためにとか

生徒 そこまで私に興味ないと思いますよ

先生 そんなことがあるのか

生徒 ありますよ。そんなもんです

先生 悲しいこと言わないでくれよ。きっとそんなことないって

生徒 先生は私の両親にあったことないでしょ

先生 ないけど

生徒 会ったこともないのに適当なこと言わないでください。仮にも先生ですよ

先生 そうだね、私は先生だよ。…そういえば、何で俺は先生やってるんだろう

生徒 知りませんよ

先生 興味とかないの

生徒 まあ聞いてあげますよ

先生 んーーー

生徒 ないんですか理由

先生 あーあれだ。金

生徒 はあ。そんな小汚い理由で教師なんて仕事してるんですか

先生 だって、金がないと生きていけないじゃん

生徒 それも手段ですよ

先生 そっかぁ

生徒 世の中に素晴らしい人材を送り出したいとかもっともらしい理由ないんですか

先生 んなもんねーよ。もし仮にあったとしようよ。こんな俺がそんな素晴らしい人材送り出せると思う?

生徒 いやむりですね

先生 でしょ、だから俺にそんな理由を持つ資格なんてない

生徒 ますます先生してる理由がわかりませんね

先生 俺もわかんないよ

生徒 やっぱり、死のうかな

先生 いやあ、もうちょっとまってよ。俺が生きる理由見つけてあげることできるかもしんないだろ?

生徒 できますかね。先生に

先生 できるかもしんないよ

生徒 じゃあ、やってみてくださいよ

先生 えっと

生徒 待ってるんで考えてください

先生 えっと

生徒 あと10秒

先生 え!

生徒 9

先生 ああ

生徒 8

先生 えっと

生徒 7

先生 俺と付き合おう

生徒 は?

先生 お前の生きる理由は俺を幸せにすることだ。ほらこれでいいだろ

生徒 ロリコンですか。軽蔑します

先生 ちげーよ

生徒 放課後二人きりの教室で生徒に交際を迫っておいて何言ってるんですか。重罪ですよ。近寄らないでください

先生 理由になるかなぁって思っただけだよ。ガキに興味なんてねーよ

生徒 へえじゃあどんな人が好みなんですか

先生 巨乳美人

生徒 軽蔑します

先生 いいよ、別にされても。俺の好みだし

生徒 どんな生活してたらそんなただれた性癖になるんですか

先生 朝起きるだろ。学校行くだろ。ホームルームするでしょ。授業して。放課後引きこもりの相手して、家に帰って。コンビニ飯食って酒飲んで寝る。これの繰り返し

生徒 休みの日は?

先生 寝てるかな。それかアニメみてる

生徒 なんていうか。つまらなさそうな人生ですね

先生 人の人生をバカにするなよ

生徒 じゃあ先生がそんな生活してる理由は何ですか?

先生 仕事疲れたら酒くらい飲みたくもなるって

生徒 休日も生産性がないじゃないですか

先生 生産性ってなんだよ。別にいいだろ。休日くらい好きにしたって

生徒 そんなのだから教え子に手を出すんですよ

先生 まだ出してねーよ

生徒 出す可能性あるんですか

先生 未来のことは分からん

生徒 最低ですね

先生 知ってるよ。お前こそどんな生活してたら死を覚悟するんだよ

生徒 朝起きて。学校行くふりして川で寝そべって本読んでかえってご飯食べて寝ます

先生 お前も生産性ないじゃん

生徒 いいんですよ。まだ、労働の義務ありませんし

先生 同い年で働いている奴いっぱいいるだろ

生徒 いいんですよ。学生なんですから

先生 学生だったら。学校こいよ

生徒 学校行って何になるんですか。あります?生産性?

先生 あるんじゃない?それこそ優秀な人材になって送り出されるとか

生徒 私にそんな素質あると思います?

先生 ないね

生徒 でしょ、だからいいんですよ

先生 休日は何してるんだよ

生徒 プライベートのことを聞いてくるなんてセクハラです

先生 これくらいいいだろ

生徒 朝起きて図書館にいって本読んでます

先生 家にはいないのか

生徒 家嫌いなんですよ

先生 大変だな

生徒 同情しても喜びませんよ

先生 そりゃ残念

生徒 先生は家好きそうですけどね

先生 大好きさ。今すぐにでも帰りたい

生徒 引きこもりの相手すみませんね

先生 これもお仕事だからな

先生 そもそも生きる理由なんて必要なの?

生徒 必要でしょ。理由なく生きてたって資源の無駄です。なので今のところ先生は無駄です

先生 ひどいなぁ

生徒 先生さっきどんな現象にも理由があるって言いましたよね

先生 ああうん言った

生徒 やっぱり理由が必要じゃないですか

先生 そうかなぁ

生徒 先生が言ったんですけど

先生 言ったよ?けどさ、じゃあもっとさかのぼってみろよ。どうして消しゴムと床の間には摩擦力が発生するんだ。そもそもなぜ消しゴムは存在するんだ?どうして消しゴムはポリ塩化ビニルから作られているんだ!どうして消しゴムは筆箱にくっつくんだ!?

生徒 知りませんよ。それ、先生の専門でしょ

先生 いや、そうでもないよ。俺研究者じゃないし

生徒 その疑問を解決するために研究者になったとかならかっこいいのに

先生 そこまでの情熱はない。それにお前との会話で初めて疑問に思った。いい勉強になったよ

生徒 あ、そういうこともあるんですね

先生 あるある。人に教えているつもりが教えられていることなんて沢山

生徒 今も何か私から教えられていることはあるんですか?

先生 んーひねくれたらおしまいってことかな

生徒 十分先生もひねくれていますよ

先生 そうかな

生徒 ええ、十分

先生 てかさ、お前まだ高校生じゃん。華のティーンエージャーだよ

生徒 そうですけどなにか

先生 若いのに死ぬなんてダメだようん

生徒 それ意味わかんないんですよね

先生 なんで

生徒 普段命は平等なんて言ってるその口で若いんだからっておかしいでしょ。老人の命は雑に扱ってよしみたいな

先生 そういうわけじゃないけどさ

生徒 じゃないけどなんですか

先生 若いってだけで価値があるんだよ

生徒 どんな価値があるっていうんですか

先生 ほら、若いだけでちやほやされる

生徒 はあ

先生 ちやほやされたらうれしくないか?

生徒 されたことないんでわかりませんね

先生 お前には承認欲求が無いのか

生徒 別に誰かに認められたいとかはないですね

先生 変わってんな

生徒 もしかしたらこんなのだから親も興味ないのかもしれないですね私に

先生 そこまで冷静に自己分析できる高校生はそういないだろうな

生徒 ほめられても死ぬのやめませんよ

先生 そこまでして死にたいのかよ

生徒 別に死にたいわけじゃありません。生きる理由がないだけです

先生 生きる理由ね。俺はなぜ生きいているんだろうか

生徒 さあ。働く理由が金の人に生きる理由なんてあるんですか

先生 死にたくないからとか

生徒 ものすごく消極的ですね。そんな人生に生産性はあるのか甚だ疑問です

先生 一応こうやって先生やって、ひねくれた生徒の補講やってるだろ

生徒 そのひねくれた生徒はもうすぐ死にます

先生 生産性なかったな

生徒 はい。残念でしたね

先生 お前のせいで俺の生きる理由まで怪しくなってきたぞ

生徒 人のせいにしないでください。先生の人生です

先生 俺の人生の価値はどこにあるんだ

生徒 自分で見つけてください。先生いい大人ですよ

先生 そうだなもうすぐアラサーのいい大人だ

生徒 アラサーになって彼女もおらずあろうことか生徒に手を出すような人の人生の価値なんてたかが知れていますよ

先生 心にグサグサ来ることばかり言うのはやめてくれるか

生徒 全面的に先生のこれまで人生のせいです

先生 過去の俺をいじめるのはやめて差し上げろ

生徒 今の先生もいじめているつもりですが

先生 たった今全俺が泣いた

生徒 ところで先生、質問良いですか

先生 ああ、なんだよ

生徒 どうして、わざわざ不登校の生徒一人のためにこうして補講なんてやってるんですか

先生 そりゃあ、教頭先生に怒られるからだよ

生徒 え、そんな

先生 俺だっていやだよ。怒られるの。怒られるのが嫌なのは子供も大人も同じだよ

生徒 大人って言ってもたいしたことないんですね

先生 全然大したことないよ。子供みたいな大人なんて沢山

生徒 先生もその一人ですもんね

先生 ああ、そうかもね

生徒 でも子供は楽しそうだけど先生は違いますね

先生 世の中さ、本当にやる気を持って行動している人がどれだけいるんだって話だよ

生徒 先生みたいに消極的な理由で補講やっている人もいますしね

先生 俺だけじゃないさ。お前高校生の何%が就職するかわかるか

生徒 30%くらいですか

先生 おしいな、20%だ。逆を返せば80%は専門学校ないし大学等に進学しているわけだ。ここではニートは考えない

生徒 ええ

先生 この進学者80%のうち何%が本当に目的を持って進学しているんだろうな

生徒 100%じゃないんですか、大学も専門学校もやりたい学科やコースに入るんですから

先生 夢見がちな少女だな

生徒 うっとおしいですその言い方

先生 俺は大学に5年間いたんだけどさ

生徒 大学は4年でしょ

生徒 軽蔑します

先生 別に教師になりたくて大学に入ったわけじゃない。ただなんとなくいったんだ

生徒 へえ

先生 ここで進学したやつに理由を聞いてもさ。みんなが行くから行く。いっとけばとりあえずいいかなって。親に大学は出ろって言われたから。なんて適当な理由で進学するやつの多いこと多いこと。俺だって似たような口だったから何も言えないけどさ

生徒 へえ

先生 何も考えずに周りに合わせて生きてる奴なんてごまんといる

生徒 そんな理由で大学に行ってみんな何をするんですか

先生 適当に卒業できる程度に授業をサボって、ゲームしたり、友達と遊んだり、バイトしたり。趣味にいそしんだりとかな

生徒 それをやりすぎて5年間になったと

先生 そのとおり、物理の授業ってくそつまんねえんだよ

生徒 物理の先生がそれをいったらおしまいです

先生 おしまいだね。けどさ、大学の授業で面白いのもあったんだよ

生徒 先生が面白いと感じるなんてよほどですね、どんな授業だったんですか

先生 教職の授業

生徒 教職?

先生 教員免許を取るための授業だよ

生徒 へえ、怒られるのがいやで補講をやっている人がぬけぬけと

先生 いやいやいや、俺が良かったって感じたのはさ。人のことを考える授業だったからだよ

生徒 先生人とのコミュニケーション苦手そうですけど

先生 苦手と面白いは別だよ。少なくとも計算式と向き合っているよりよっぽど楽しかった

生徒 だから先生になった

先生 そうだね

生徒 そんな夢見る少年が金の亡者になってしまったんですね

先生 亡者って。まあ理想と現実は乖離しているんだよ。実際に仕事としてやってるとさいやなことたくさんあって嫌になって。何のためにやってるのかわからなくなる

生徒 そんなもんですか

先生 そんなもんだよ。気づいたらこんなのになってた

生徒 悲劇ですね

先生 人の人生を悲劇扱いするなよ。まあでも現実にも悪くないこともあるよ

生徒 たとえば?

先生 お前みたいな面白いやつにめぐり合う

生徒 は?人を珍獣扱いするのやめてください

先生 お前は十分珍獣だよ。お前のおかげで何とか明日も先生やれそうだ

生徒 私を理由にしても無駄ですよ。すぐ死にますし

先生 まだ、死ぬ気満々なのかよ

生徒 だってまだ生きる理由ありませんから

先生 理由がなけりゃ死ぬのかよ

生徒 死にますよ。もちろん

先生 ひねくれてんなぁ

生徒 どうとでも言ってください。私の人生です

先生 やりたいことなんてないまま大学行ったけどさ、そこでこうやって先生という天職に巡り合えたんだ。目的無くやってみるってのも悪くないぞ

生徒 そんなの先生が奇跡的に巡り合えた可能性あるじゃないですか。それに私の眼には天職についている人の仕事ぶりには見えませんでしたよ。だるそうだし

先生 転職でもだるいもんはだるい。にんげんだもの

生徒 良いようにみつを使わないでください

先生 ごめんみつを

生徒 私こんなに人としゃべったの初めてかもしれません

先生 へえ、やるじゃん俺

生徒 気持ち悪いのでやめてください

先生 んなこというなよ。お前の一番更新だぞ

生徒 さらに気持ち悪いです

先生 何とでも言えよ

生徒 けど、人と話すの悪くないかもしれません

先生 おっ?改心したか?死ぬのやめるか

生徒 やめませんよ。その程度のことは理由になりません

先生 ひねくれてんなぁ

生徒 何とでも言ってください。今まで人と関わるということが良くわかりませんでした

先生 学校にはたくさん人がいるだろ

生徒 たくさん人がいるからと言って人と関わるわけではありません。先生は女子が多い環境であれば彼女ができると勘違いするタイプですね

先生 いや、俺は勘違いしないね

生徒 なぜですか

先生 俺は女に囲まれようがモテたりも彼女が出来たりもしない。こんな性格だから

生徒 よくわかってるじゃないですか

先生 俺のことは一番俺が良くわかってるよ

生徒 ほんの少しだけ見直しました

先生 もう少しだけ見直してくれよ

生徒 いやです、これ以上は天地がひっくり返ってもありません

先生 手厳しいね

生徒 人との会話って意外と続くんですね

先生 それには理由がいくつかあると思うよ

生徒 なんですか

先生 一つ目は俺がコミュニケーション能力に長けている

生徒 それはあり得ないので却下です

先生 二つ目はお前が実はコミュニケーション能力に長けていた

生徒 その可能性は大いにあり得ますね

先生 自信過剰だぞお前。三つ目は俺たちの相性が良かった

生徒 気持ち悪いです

先生 可能性あるだろ

生徒 コミュニケーション能力マイナスどうしを足してもマイナスですよ

先生 掛けたらプラスだろうが

生徒 ああ。一理ありますね

先生 ほら、百理くらいあるよ

生徒 変な造語作らないでください。広辞苑に謝るべきです

先生 そこまでの罪を俺は背負ってしまったのか

生徒 ほとんど前科者です。いや、すでに前科ありましたね。執行猶予なしで豚箱行きです

先生 あれは前科扱いなのかよ

生徒 私が訴え出れば先生の人生をぶち壊すことなんて容易です。もっと危機感を持ってください

先生 お前に下手なことは言えないってことかよ

生徒 そうですね、肝に銘じておいてください

生徒 もう帰ろうかな

先生 明日も学校来てくれよ

生徒 教頭先生に怒られるのが嫌だから?

先生 それもある

生徒 ほかにも理由あるんですか?

先生 あるよ

生徒 教えてくださいよ

先生 やだよ

生徒 じゃあ私今日死にますね

先生 ひねくれてんなぁ

生徒 そっちこそ

先生 …楽しかったよ

生徒 は?気持ち悪い

先生 ちょっとまてよ、そういうんじゃないから

生徒 じゃあどういうのなんですか

先生 私から教えられたことないかって聞いたよな

生徒 はい。ひねくれたらおしまいだって

先生 それ以外にもあったんだよ

生徒 へえ。教えてください。教えてくれなきゃ死にます

先生 こいつ…考えたことなかった。生きる理由なんて

生徒 考えずに大人になれるんですね

先生 なれるよ。言ったろ

生徒 何も考えずに周りに合わせて生きてる奴なんてごまんといる

先生 そう、俺もその一人だったよ

生徒 だった?

先生 理由が出来た。生きる理由。先生が先生であり続ける理由

生徒 仕方ないんで聞いてあげますよ

先生 めんどくせ

生徒 死にますよ?

先生 はいはい

生徒 早く

先生 お前みたいなやつのよりどころになる

生徒 はあ

先生 お前言ったろ。人と話すの悪くないって

生徒 ええ

先生 他にもいるんだよ。不登校だったり、人とコミュニケーションとるのが苦手なやつ

生徒 ほう

先生 俺は熱血教師じゃねえけどさ。そういうやつがちょっとやる気を出せるきっかけになれねえかなって

生徒 ふーん

先生 言ってて恥ずかしくなってきた

生徒 悪くないんじゃないですか

先生 そうかなぁ。このスタイル変える気はないし。せいぜい愚痴聞いてやるくらいだけどな

生徒 いいじゃないですかそれ

先生 そっか、浅野がそういうならそれでいいか

生徒 なんで私基準なんですか

先生 ひねくれもの日本代表だろ。お前

生徒 そーかもしれませんね

先生 否定しないんだな

生徒 私もできました。明日から学校に来る理由

先生 おお、なんだよ

生徒 卒業するため

先生 ああ、いいじゃないか。よかったよ。お前がとりあえず生きてくれるみたいで

生徒 卒業して。山本先生と結婚する

先生 は?

生徒 ひねくれものでくそめんどくさい先生の生きる理由を手伝うことが私の生きる理由

先生 いきなり結婚かよ

生徒 どのみち卒業したら実家を出ていけと言われてますし。結婚したほうが合理的でしょ

先生 ああ、そうだな。そっちの方が生産性もありそうだ

生徒 気持ち悪い

先生 未来の夫に向かって

生徒 なんか先生にそういわれると気持ち悪くなりました

先生 じゃあやめるか

生徒 いえ、これが私の生きる理由なので

先生 ああ、そうかい

生徒 いやいや全うします

先生 いやいやね

生徒 いやいやじゃなくせるよう努力してください

先生 努めますよ

生徒 それでこそ私の未来の旦那さんです

先生 恥ずかしくなってきた

生徒 可愛いところあるじゃないですか普段気持ち悪いのに

先生 何とでも言ってくれ。ということはコンビニ飯から脱却か

生徒 今どき妻が全部家事すると思ったら大間違いですよ。男女共同参画社会です

先生 社会に詳しくないんだよなぁ

生徒 家事全般できるように婿入り修行しててください

先生 婿入りなのか

生徒 嫁入り修行の逆だから

先生 ああ、そっち

生徒 楽しみにしてますよ山本先生のお味噌汁

先生 味噌汁だけでいいのか

生徒 まずは味噌汁。日本人として大前提です

先生 わかったよ。そのかわり浅野の卵焼きを楽しみにするかな

生徒 卵焼きですか。だし巻き卵なら得意です

先生 我が家は甘い卵焼きだ

生徒 邪道です。日本人失格です

先生 今沢山の人を敵に回したぞ

生徒 まあ、いいでしょう。常に食卓にはだし巻き卵と甘いのをセットで出してあげます。サービスです

先生 大盤振る舞いだな

生徒 妻としての最大限の譲歩です

先生 ありがたいことだね

生徒 まあ期待せずに待ってますよお味噌汁

先生 期待しまくって待ってるよ卵焼き

生徒 じゃあ、明日

先生 ああ、また明日

ピザにはタバスコ

父さんはいいことがあるとピザを頼むひとだった。
僕がテストで100点取ったという理由で今日の晩御飯はピザになった。

父さんはピザに必ずタバスコをかけて食べる。
それを口いっぱいに頬張り、ビールで流し込む。

「これが最高の贅沢だ」

僕も真似がしたくて、ピザにタバスコをかけて食べようとする。
けれど僕の幼い舌にはまだ早くて、辛さにむせてしまう。

「父さんと同じ大人になったら食べれるようになるぞ」

そういう父さんを見て僕は悔しくて

「早く大人になってやる」

と心に誓うのだ。

次のチャレンジのために僕が勉強をした。テストで100点取りまくり、何度もタバスコに挑戦した。
けれど、やっぱり食べられない。

俺はビールが飲める歳になった。
ピザにタバスコをかけて口に放り込み、無理やりビールで流し込む。

「親父、これで大人になれたかなぁ」

だめだ、タバスコが目にしみるや...
まだまだ、親父には追いつけないみたいだ。
もうちょっと待っててくれ

ちゃんとタバスコかけてピザ食べれるようになるからさ


私はシガーソケット


私は火起こしが得意です
タバコ吸うなら任せてください
え、禁煙...はい、そうですよね。体に悪いですもんね...

私は火おこしが得意です
えっ、それなんですか?
長い紐が出てて...
ああ、充電器ですか
わかりました。お仕事務めさせていただきます。
はい!これで携帯が充電できました!
次は何しましょうか!火起こししましょうか?

私は火起こしが得意です
あっ、この人は喫煙者の人だ!
任せてください。少々お待ちくださいね
えっ、ライター使うんですか...
はい、そうですよね。すぐ日をつけられますもんね...

シガーのためのソケットです
なのに、私がやるのはほとんど携帯の充電。
タバコを吸う人は少なくなって。
吸う人だって私じゃなくてライターを、使うんです。
私は、なんのためにシガーソケットに生まれてきたのかなぁ

生まれ変わったらはUSB差し込み口になりたいなぁ

「うさぎと少女」

うさぎと少女は仲良し

トイレにだってお風呂にだってついてくる
寝るときも一緒
起きるときも一緒

ご飯も仲良く分けて食べる
「今日のご飯はみそラーメンですよ」
「たくさんたべますねー」

一緒におまごとしながらお母さんを待ちます
トントントン
「今日のご飯はステーキですよ。おいしいですか?」
「あっ!もうーおとなしくしてよ。おままごとなんだから。だめ!もー」

ガチャ

「あ、お母さん帰ってきた!お母さんおかえり!」

バサッ
ガチャ

「…お母さん。お仕事忙しいみたい。けど、ご飯買ってきてくれたよ。サンドイッチあるよ。一緒に食べよ」

「ほんとあなたは寂しがり屋さんね。大丈夫だよ。一緒だよ」

うさぎと少女は寄り添って眠る
うさぎと少女は寄り添って生きる

「ごめん。ごはんなくなっちゃった」

うさぎは文句を言わない
ただただ少女の隣にいる

「ごめん。今日もお母さん帰ってこなかった。ごはん我慢してね」

うさぎは何も言わない
ただただ少女の隣で眠る

「ごめん。ちょっと調子が悪いみたい。今日はおままごとできないや」

うさぎは何も言えない
ただただ少女の隣で生きる


少女は文句を言わない
少女は何も言わない
少女は何も言えない


うさぎと少女は寄り添って眠る
うさぎと少女は寄り添って生きる

「おなかが減ったなぁ」
ぼそりと少女が呟いた

うさぎはおままごとセットのお皿に横たわる
うさぎは安らかに眠る

少女はフォークを持った
少女は今日を生きた


次の日少女は救い出された
少女はおままごとをしなくなった

Snow Girl

 

【登場人物】
アキト:荒れ気味の男子。会えなくなってしまった女の子のことが忘れられず、ほかの子に告白されても全部振っている。口が悪い。

美香、少女:全身に防寒具を身にまとっている。熱を持ったものが苦手。色白。かわいいけど自分勝手。

うわさガールズ:町の七不思議とかのうわさが大好きな女の子二人組

田村:アキトの友達。女にがっつきすぎている。頭が悪い。当然モテない。

小野:アキトの友達。荒れ気味なアキトのよき理解者。クールでカッコイイ。モテる。

男ABC:不良ぶってる奴ら

 

 


うわさガールズ
「ねぇ、知ってる?最近のサンタは魔法使えるんだって」
「えっ?サンタって魔法少女だったの?」
「違うわよ。何でも~最期の願いを叶えてくれるんだって」
「へぇ、最期のねぇ…」


ベンチに男が三人座っている
隣のベンチに全身にセーター、手袋、ニット帽に身を包まれた少女が座っている
田村「クリスマスって何だよ?」
アキト「は?リア充共が昼夜を問わずイチャコラする祭りだろ?」
田村「よくもまぁあきないねぇ。今年も俺らは独り身か~」
小野「おい、オレをお前と一緒にすんなよ」
田村「は?」
小野「オレこれから、デートだから」
田村「はあぁぁ!?貴様、いつの間に…」
小野「お前がぼけっとしてる間にだよ」
呆れ顔の小野、悔しがる田村

田村「なぁ、アキトは女の心当たりとかないのか?けんか強いし、お前結構モテるじゃん」
アキト「んなもんねぇよ」
田村「なんだよぉ。あ、もしかして~男にしか興味ないとか?」
アキトがこぶしを振り上げる
アキト「殺すぞ」
田村「たんまたんま!冗談だって冗談。殺すとかお前が言うとシャレにならねぇんだよ」
小野「アキトにはずっと好きな女がいるんだよ。どこにいるのかも分からないらしいけど」
アキト「だまれ」
アキトが小野の胸倉をつかむ
小野「こいつは馬鹿だから説明してるんだよ」
小野はアキトから離れる
アキト「なら仕方ない」
田村「馬鹿にするなぁ!!うわああああああん」
田村が走り出す。やれやれと小野が追いかける

ゆっくりと立ち上がりアキトも追いかける
少女の前をアキトが通り過ぎようとしたとき服の裾を掴まれる。このとき少女の顔は見えない
アキト「あ?なんだよ?てめぇ」
少女「お腹すいた」
アキト「は?」
少女「お腹すいたって言ってる」
アキト「黙れ」
少女「アイス食べたい」
アキト「くそ寒いこの時期にか?」
少女「アイス食べたいって言ってる」
アキト「うるせぇ奴だな。わかったよ、ガリガリ君でいいだろ」
少女「ハーゲンダッツが良い」
アキト「はあ?」
少女「ハーゲンダッツが良いって言ってる」
アキト「…ったく。何なんだよ」

 

ハーゲンダッツを食べる少女。
アキト「で、てめぇは誰なんだよ」
沈黙

アキト「…だから誰なんだよ!?」
少女「忘れちゃったの…?」
アキト「え?」
一拍おいて
少女「私のこと忘れちゃったんだね…うわあぁぁぁぁぁぁぁん」
泣きじゃくる少女
アキト「ちょっ、待てよ!待てってば!顔!、顔見せろ!」
アキトは少女のニット帽を取る
アキト「…!?。え…美香?」
美香「やっとわかったの…」
美香はニット帽を引ったくりまたかぶる
美香「恥ずかしい…」
恥ずかしがる美香
アキト「…!?」
美香「今変なこと考えてたでしょ!」
アキト「か、考えてねぇよ!」

互いにどうしたいいのか分からないご様子
アキト「久しぶりだな」
美香「うん」
アキト「空が青いな」
美香「うん」
アキト「地球は丸いな」
美香「うん」
アキト「元気にしてたか」
美香「ううん…寂しかった」
アキト「え?」
美香「アキトに会いたかった」
アキト「そうか」
照れながら
アキト「俺も…会いたかった…」
美香「え?なんて言ったの?ん?」
恥ずかしがりながら叫ぶ
アキト「あ、会いたかったって言ったんだよ!!わかったか!!」
叫んで息切れするアキト
アキト「はぁ、はぁ」
気にもせず美香は要求する
美香「ねぇ、スケートしたい」
アキト「は?」
美香「スケートがしたいって言ってる」
アキト「あーわかったよ。連れてってやる」
男三人組が歩いてくる
美香がアキトを引っ張って歩く。はしゃぎすぎて周りが見えていない
三人組の一人と美香がぶつかってしまう
男A「どこ見て歩いてんだ!」
美香「ご、ごめんなさい…」
男A「ごめんで済んだら警察はいらねぇんだよ」
男が美香の腕を掴む
美香「痛ッ!」
アキト「その通りだ、ボケッ!」
アキトは男を殴り倒す。そのまま馬乗りになりボコボコにする
アキト「てめぇ、美香に手ェ出してただで済むと思うなよっ!」
男B「も、もうやめてくれよ…死んじまうよぉ」
男C「や、やめてくれ!」
アキト「黙れ!クズッ!オレはこいつに用があんだよ!」
美香「やめてっ!」
美香が叫ぶ
美香「何ですぐに手を出すの!?アキトっダメだよそういうのっ!」
ゆっくりとアキトは男から離れる。
アキト「すまねぇ。俺が悪い」
アキトは土下座する
男A「すまねぇだ?ふざけんじゃねぇ」
アキトは蹴り倒される
三人からボコボコにされる
アキトは抵抗しない
美香「や、やめてっ。もう良いでしょ…ねぇ。おねがい…お願いします」
美香が男Aにしがみつく
男A「ふぅ、わかったよ。行こうぜ」
男B「ああ」
男C「うん」
男三人組はける

パンッ

美香がアキトの顔をはたく
美香「ダメだよ…傷つけたら傷つけられるんだよ…だから、もうけんかはやめて?」
アキト「…わかった。もうけんかはしない。美香に誓って」
「うん。いい子、いい子。ほらスケート行こ?」
美香がアキトに肩を貸して立ち上がる
「おう」
二人がはける

 

 

アキト「お前スケートうまいんだな…」
お疲れ気味のアキト
美香「アキトはド下手だよね~」
アキト「うるせぇよ」
アキト「だいたい、中学の時やってたってとんだブルジョアだなお前」
美香「ブルジョア言うなっ」
アキトが美香の頬をつつく
美香「ねぇ」
アキト「なんだ、ウンコか?」
美香「!?」
美香がアキトのみぞおちに一発かます
アキト「うごっ!」
美香「デリカシー」
怪訝な目でアキトを見る
一転して猫なで声で
美香「カラオケ。カラオケがしたい」
アキト「お、おう、いいぜ。俺の美声を聞かせてやる」

 

 

ガラガラ声で
アキト「最高点、34点だと…どういうこった…」
美香「天然記念物級の下手さね。てか、のどガラガラすぎでしょ」
アキト「シャウトしすぎた…ってか空調10℃ってなんだよ」
美香「あ、ごめん…」
アキト「いや、別にいいけどよ、わざわざ寒くする割には服脱ごうともしないし」
美香「女の子に脱げとか、変態!」
アキト「いや、脱げとは言ってねぇよ」

美香「あ、きれい…」
アキト「ん?イルミネーションか…確かにいつもよりきれいに見えるな…」
美香「なんで?」
アキト「なんでってそりゃ…なぁ」
美香「なぁってどういうこと?」
首をかしげる美香
アキト「う、う…」
美香にデコピンをかます
美香「痛っ!なにすんのよぅ。うう、痛い…」
アキト「い、言わせんな」
美香「自分勝手~」
アキト「はいはい」
美香「バーカ」
アキトを右手で軽く殴る

ボトッ

美香の右の手袋が落ちる。
アキト「落ちたぞ…って。え!?」
アキトは目を丸くする
美香の本来、生の手があるはずのところにそれはない
美香「あーあ、もう時間かぁ…」
アキト「どういうこと…?」
美香「最期の魔法が解けちゃうの…」
アキト「最期の…」

美香「もう気づいてるんじゃない?私が何者か」
アキト「…」
美香「私は―――」
アキト「ゆきだるま」
沈黙
アキト「そうだよな…?」
美香「そうだよ…私はもう―――」
アキトが美香の口を手でふさぐ
アキト「言わなくていい」
美香「うん…」
アキト「ほんとに最期なのか…?どうにかならないのか?」
アキトは嘆く
しかし、美香は首を振る
美香「最期にあなたに会いたかった」
アキト「せっかく、会えたと思ったのによぉ…」
美香がアキトにデコピンをする
アキト「ッ!」

美香「ギュッってして?」
アキト「・・・!?そ、そんなことしたら…」
アキトは戸惑う
美香「ギュッて抱きしめて?」
アキトはおそるおそる抱き寄せる。
首を振る美香。
美香「もっと、強くギューーーーーってして」
強く抱きしめる
アキト「うう…」
アキトは泣き始める
美香「暖かいよ…アキト…」
アキト「美香、みかぁ…」
泣きじゃくるアキト
美香はその涙に触れる
美香「暖かい、泣いてくれてるんだ…」
離そうとするアキト、美香はそれを許さない、今度は美香がアキトを抱きしめる
美香「だめ!離さないで。あなたの熱で溶けたいの…」

アキト「…わかった…」
アキトは強く強く抱きしめる
美香「ふふ、ちょっと痛い…」
アキト「…美香」
美香「ん?なにアキト」
アキト「…好きだ。ずっとずっとお前のことが大好きだ」
美香はアキトを突き飛ばす
美香「ダメ!そんなのダメだよ…私のことなんか忘れて…?お願い。最後のお願い」
アキトは美香に近寄り抱き寄せ美香の髪に鼻をうずめる
アキト「いやだ…それだけは言うこと聞けない。お前のことを忘れることなんてできない」
美香「…私。あなたの足かせになりたくない…アキトに幸せになって欲しいの…ただ、それだけなの」
沈黙
二人は少し距離を置く

アキト「ったく自分勝手だなぁ、お前。わかった。俺は幸せになる。この先ほかの子と付き合って、いろーんなこともする。結婚だってするかもしれない。でも、美香のことは忘れない。絶対に」
美香「…馬鹿」
アキト「馬鹿でいい。俺は美香が好きだ、大好きだ」
美香「うるさい…私も好き…」
消え入るような声で囁く
アキト「ん?何ていったんだ?うん?」
美香「いじわる」
アキト「ん?」
美香「アキトが好き!大好き!」
アキトが照れる。それを見て美香が笑う。
二人は互いに歩み寄ってゆく、そして抱き合う。


美香「ありがとう」

ゆっくりとアキトは美香に口付ける。
アキトはほんの一瞬唇に暖かさを感じた気がした

 

気づくと、そこには美香が身に着けていた服。
そして融けかけの雪。

アキト「好きにならせてくれてありがとう」

 

アソビの倉庫運営開始

結希遊と申します。

 

晴れてはてなブログにて「アソビの倉庫を運営させていただくことになりました。

趣味で演劇の脚本や短編小説、写真を撮ったりなどしております。

そんな作品を公開する場にしたいと考えております。

 

ごゆっくりお過ごしくださいませ。

 

結希遊