アソビの倉庫

短編小説、演劇脚本、写真など、わたくし結希遊の作品を掲載しております

Snow Girl

 

【登場人物】
アキト:荒れ気味の男子。会えなくなってしまった女の子のことが忘れられず、ほかの子に告白されても全部振っている。口が悪い。

美香、少女:全身に防寒具を身にまとっている。熱を持ったものが苦手。色白。かわいいけど自分勝手。

うわさガールズ:町の七不思議とかのうわさが大好きな女の子二人組

田村:アキトの友達。女にがっつきすぎている。頭が悪い。当然モテない。

小野:アキトの友達。荒れ気味なアキトのよき理解者。クールでカッコイイ。モテる。

男ABC:不良ぶってる奴ら

 

 


うわさガールズ
「ねぇ、知ってる?最近のサンタは魔法使えるんだって」
「えっ?サンタって魔法少女だったの?」
「違うわよ。何でも~最期の願いを叶えてくれるんだって」
「へぇ、最期のねぇ…」


ベンチに男が三人座っている
隣のベンチに全身にセーター、手袋、ニット帽に身を包まれた少女が座っている
田村「クリスマスって何だよ?」
アキト「は?リア充共が昼夜を問わずイチャコラする祭りだろ?」
田村「よくもまぁあきないねぇ。今年も俺らは独り身か~」
小野「おい、オレをお前と一緒にすんなよ」
田村「は?」
小野「オレこれから、デートだから」
田村「はあぁぁ!?貴様、いつの間に…」
小野「お前がぼけっとしてる間にだよ」
呆れ顔の小野、悔しがる田村

田村「なぁ、アキトは女の心当たりとかないのか?けんか強いし、お前結構モテるじゃん」
アキト「んなもんねぇよ」
田村「なんだよぉ。あ、もしかして~男にしか興味ないとか?」
アキトがこぶしを振り上げる
アキト「殺すぞ」
田村「たんまたんま!冗談だって冗談。殺すとかお前が言うとシャレにならねぇんだよ」
小野「アキトにはずっと好きな女がいるんだよ。どこにいるのかも分からないらしいけど」
アキト「だまれ」
アキトが小野の胸倉をつかむ
小野「こいつは馬鹿だから説明してるんだよ」
小野はアキトから離れる
アキト「なら仕方ない」
田村「馬鹿にするなぁ!!うわああああああん」
田村が走り出す。やれやれと小野が追いかける

ゆっくりと立ち上がりアキトも追いかける
少女の前をアキトが通り過ぎようとしたとき服の裾を掴まれる。このとき少女の顔は見えない
アキト「あ?なんだよ?てめぇ」
少女「お腹すいた」
アキト「は?」
少女「お腹すいたって言ってる」
アキト「黙れ」
少女「アイス食べたい」
アキト「くそ寒いこの時期にか?」
少女「アイス食べたいって言ってる」
アキト「うるせぇ奴だな。わかったよ、ガリガリ君でいいだろ」
少女「ハーゲンダッツが良い」
アキト「はあ?」
少女「ハーゲンダッツが良いって言ってる」
アキト「…ったく。何なんだよ」

 

ハーゲンダッツを食べる少女。
アキト「で、てめぇは誰なんだよ」
沈黙

アキト「…だから誰なんだよ!?」
少女「忘れちゃったの…?」
アキト「え?」
一拍おいて
少女「私のこと忘れちゃったんだね…うわあぁぁぁぁぁぁぁん」
泣きじゃくる少女
アキト「ちょっ、待てよ!待てってば!顔!、顔見せろ!」
アキトは少女のニット帽を取る
アキト「…!?。え…美香?」
美香「やっとわかったの…」
美香はニット帽を引ったくりまたかぶる
美香「恥ずかしい…」
恥ずかしがる美香
アキト「…!?」
美香「今変なこと考えてたでしょ!」
アキト「か、考えてねぇよ!」

互いにどうしたいいのか分からないご様子
アキト「久しぶりだな」
美香「うん」
アキト「空が青いな」
美香「うん」
アキト「地球は丸いな」
美香「うん」
アキト「元気にしてたか」
美香「ううん…寂しかった」
アキト「え?」
美香「アキトに会いたかった」
アキト「そうか」
照れながら
アキト「俺も…会いたかった…」
美香「え?なんて言ったの?ん?」
恥ずかしがりながら叫ぶ
アキト「あ、会いたかったって言ったんだよ!!わかったか!!」
叫んで息切れするアキト
アキト「はぁ、はぁ」
気にもせず美香は要求する
美香「ねぇ、スケートしたい」
アキト「は?」
美香「スケートがしたいって言ってる」
アキト「あーわかったよ。連れてってやる」
男三人組が歩いてくる
美香がアキトを引っ張って歩く。はしゃぎすぎて周りが見えていない
三人組の一人と美香がぶつかってしまう
男A「どこ見て歩いてんだ!」
美香「ご、ごめんなさい…」
男A「ごめんで済んだら警察はいらねぇんだよ」
男が美香の腕を掴む
美香「痛ッ!」
アキト「その通りだ、ボケッ!」
アキトは男を殴り倒す。そのまま馬乗りになりボコボコにする
アキト「てめぇ、美香に手ェ出してただで済むと思うなよっ!」
男B「も、もうやめてくれよ…死んじまうよぉ」
男C「や、やめてくれ!」
アキト「黙れ!クズッ!オレはこいつに用があんだよ!」
美香「やめてっ!」
美香が叫ぶ
美香「何ですぐに手を出すの!?アキトっダメだよそういうのっ!」
ゆっくりとアキトは男から離れる。
アキト「すまねぇ。俺が悪い」
アキトは土下座する
男A「すまねぇだ?ふざけんじゃねぇ」
アキトは蹴り倒される
三人からボコボコにされる
アキトは抵抗しない
美香「や、やめてっ。もう良いでしょ…ねぇ。おねがい…お願いします」
美香が男Aにしがみつく
男A「ふぅ、わかったよ。行こうぜ」
男B「ああ」
男C「うん」
男三人組はける

パンッ

美香がアキトの顔をはたく
美香「ダメだよ…傷つけたら傷つけられるんだよ…だから、もうけんかはやめて?」
アキト「…わかった。もうけんかはしない。美香に誓って」
「うん。いい子、いい子。ほらスケート行こ?」
美香がアキトに肩を貸して立ち上がる
「おう」
二人がはける

 

 

アキト「お前スケートうまいんだな…」
お疲れ気味のアキト
美香「アキトはド下手だよね~」
アキト「うるせぇよ」
アキト「だいたい、中学の時やってたってとんだブルジョアだなお前」
美香「ブルジョア言うなっ」
アキトが美香の頬をつつく
美香「ねぇ」
アキト「なんだ、ウンコか?」
美香「!?」
美香がアキトのみぞおちに一発かます
アキト「うごっ!」
美香「デリカシー」
怪訝な目でアキトを見る
一転して猫なで声で
美香「カラオケ。カラオケがしたい」
アキト「お、おう、いいぜ。俺の美声を聞かせてやる」

 

 

ガラガラ声で
アキト「最高点、34点だと…どういうこった…」
美香「天然記念物級の下手さね。てか、のどガラガラすぎでしょ」
アキト「シャウトしすぎた…ってか空調10℃ってなんだよ」
美香「あ、ごめん…」
アキト「いや、別にいいけどよ、わざわざ寒くする割には服脱ごうともしないし」
美香「女の子に脱げとか、変態!」
アキト「いや、脱げとは言ってねぇよ」

美香「あ、きれい…」
アキト「ん?イルミネーションか…確かにいつもよりきれいに見えるな…」
美香「なんで?」
アキト「なんでってそりゃ…なぁ」
美香「なぁってどういうこと?」
首をかしげる美香
アキト「う、う…」
美香にデコピンをかます
美香「痛っ!なにすんのよぅ。うう、痛い…」
アキト「い、言わせんな」
美香「自分勝手~」
アキト「はいはい」
美香「バーカ」
アキトを右手で軽く殴る

ボトッ

美香の右の手袋が落ちる。
アキト「落ちたぞ…って。え!?」
アキトは目を丸くする
美香の本来、生の手があるはずのところにそれはない
美香「あーあ、もう時間かぁ…」
アキト「どういうこと…?」
美香「最期の魔法が解けちゃうの…」
アキト「最期の…」

美香「もう気づいてるんじゃない?私が何者か」
アキト「…」
美香「私は―――」
アキト「ゆきだるま」
沈黙
アキト「そうだよな…?」
美香「そうだよ…私はもう―――」
アキトが美香の口を手でふさぐ
アキト「言わなくていい」
美香「うん…」
アキト「ほんとに最期なのか…?どうにかならないのか?」
アキトは嘆く
しかし、美香は首を振る
美香「最期にあなたに会いたかった」
アキト「せっかく、会えたと思ったのによぉ…」
美香がアキトにデコピンをする
アキト「ッ!」

美香「ギュッってして?」
アキト「・・・!?そ、そんなことしたら…」
アキトは戸惑う
美香「ギュッて抱きしめて?」
アキトはおそるおそる抱き寄せる。
首を振る美香。
美香「もっと、強くギューーーーーってして」
強く抱きしめる
アキト「うう…」
アキトは泣き始める
美香「暖かいよ…アキト…」
アキト「美香、みかぁ…」
泣きじゃくるアキト
美香はその涙に触れる
美香「暖かい、泣いてくれてるんだ…」
離そうとするアキト、美香はそれを許さない、今度は美香がアキトを抱きしめる
美香「だめ!離さないで。あなたの熱で溶けたいの…」

アキト「…わかった…」
アキトは強く強く抱きしめる
美香「ふふ、ちょっと痛い…」
アキト「…美香」
美香「ん?なにアキト」
アキト「…好きだ。ずっとずっとお前のことが大好きだ」
美香はアキトを突き飛ばす
美香「ダメ!そんなのダメだよ…私のことなんか忘れて…?お願い。最後のお願い」
アキトは美香に近寄り抱き寄せ美香の髪に鼻をうずめる
アキト「いやだ…それだけは言うこと聞けない。お前のことを忘れることなんてできない」
美香「…私。あなたの足かせになりたくない…アキトに幸せになって欲しいの…ただ、それだけなの」
沈黙
二人は少し距離を置く

アキト「ったく自分勝手だなぁ、お前。わかった。俺は幸せになる。この先ほかの子と付き合って、いろーんなこともする。結婚だってするかもしれない。でも、美香のことは忘れない。絶対に」
美香「…馬鹿」
アキト「馬鹿でいい。俺は美香が好きだ、大好きだ」
美香「うるさい…私も好き…」
消え入るような声で囁く
アキト「ん?何ていったんだ?うん?」
美香「いじわる」
アキト「ん?」
美香「アキトが好き!大好き!」
アキトが照れる。それを見て美香が笑う。
二人は互いに歩み寄ってゆく、そして抱き合う。


美香「ありがとう」

ゆっくりとアキトは美香に口付ける。
アキトはほんの一瞬唇に暖かさを感じた気がした

 

気づくと、そこには美香が身に着けていた服。
そして融けかけの雪。

アキト「好きにならせてくれてありがとう」